管理栄養士の森由香子さんは「後期高齢者の食生活は、一日5食だったりおやつを食べたりして、幅広く栄養をとることが大切だ。とはいえ料理がつい面倒という人は、缶詰や惣菜、レトルト食品を利用するのでもいい」という――。
※本稿は、森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■食欲がわかない後期高齢者に、1日5食をおすすめする理由
60歳前後の人はそれほどでもないのですが、75歳くらいになって後期高齢者と呼ばれる年齢になってくると、食が細くなってしまう人の割合はかなり増えてきます。
しかし、人はいくつになってもバランスのとれた食事をするのが基本です。できるだけ、量よりも質を考えて、若さと健康を維持する食事を心がけていただきたいと思います。
後期高齢者になったら、食事の面で固定観念にとらわれる必要はありません。もっとわがままに、自分中心の食事で栄養不足を防ぎましょう。
たとえば、1回に食べられる量が少なくなってきたら、1日3食ではなく、5食にしてもよいですし、おやつを充実させるのもよいでしょう。とにかく、いろいろな食材を食べて、幅広く栄養をとっていただきたいと思います。
私は、「最近食べられなくなってきた」「食べたいものが見つからない」とおっしゃる方に、友人を誘ってバイキング料理に出かけることをおすすめしています。
最初はあまり気が進まなくても、並んでいる料理を見ているうちに、食べてみようと思うものが見つかるかもしれません。また、試しに少しずつ食べているうちに、「おいしい!」と感じるものが見つかるかもしれません。
それに、久しぶりに友人と外食ということになれば、少しおしゃれをして出かけようという気持ちになるでしょう。
人と会って食事をすると、ひとりで食べる“孤食”よりも食欲が出てくることが多いですし、会話が気持ちを前向きにし、認知機能低下の予防にもつながります。
そういえば、私の大学院時代の恩師は、「食欲がなくて食べられないときは、お寿司以外も扱っている回転寿司に行ってみましょう」と言っていました。
流れてくる豊富なメニューを眺めていると、何かしら食べたいものが見つかるし、食べたいものが見つかれば、自然と食欲もわいてくるからです。
まずは思い切って友人に声をかけて、お店を選ぶところからはじめてみましょう。
■食物繊維、たんぱく質、カルシウム…管理栄養士おすすめのおやつ選び
1日3食しっかり食べるのは非常に重要なことですが、栄養不足を補うためには、おやつを上手に活用するのもよいことです。
私たちが不足しがちな栄養素の代表といえば、食物繊維、たんぱく質、カルシウムです。それぞれを補給できるおすすめのおやつを、ここでご紹介しておきましょう。
まず食物繊維です。
理想的な目標量は、成人では24g/日以上と考えられています。
たとえば、つぶあんのお汁粉の場合、1食分で食物繊維は6.5gにもなります。
お茶碗1杯分のごはんに含まれる食物繊維はわずか1.8gですから、その差は歴然ですね。同様に、つぶあんが入ったもなか、草餅、どら焼きなどもよいと思います。
また、ミルクチョコレートも1食分40gで1.6gとれ、おやつの中では高い方なのでこちらもおすすめです。
(出典 www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp)
たんぱく質の場合、1日の推奨量は、15~64歳の男性は65g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gです。
こちらは、なんといっても肉が入っている中華まんじゅうがおすすめです。1食分でたんぱく質が10gとれます。また、原料にチーズや卵を使ったベイクドチーズケーキが7.7g、カスタードプリンは6.2gのたんぱく質が補給できます。
カルシウムの1日の推奨量は、30歳以上の男性750mg、女性650mg、75歳以上の男性700mg、女性600mgです。
カルシウム補給におすすめなのが、ホワイトチョコレートです。1食分40gで100mgとれます。そのほか、カスタードプリンが89mg、ババロアは94mg、アイスクリーム(普通脂肪)は245mgとたっぷりとれます。
ただし、アイスクリームはカロリーも高いので、注意しましょう。
おやつといえば太るもの、食べてはいけないものと思われがちですが、この通り、立派な栄養補給源にもなります。上手に活用して、栄養不足防止に役立ててください。
■食事作りが面倒でも、栄養不足にならない手抜きアイデア
60歳を過ぎると、さまざまな家庭の事情によって、一人暮らしになる方は決して少なくありません。
そこで問題になってくるのが、食事の準備です。特に、それまで料理をしてこなかった方が一人暮らしになると、いきなり栄養不足に陥ってしまうことがあるのです。
また、もともと料理をしていた方でも、年をとってくると何かと面倒になってくるし、自分のぶんだけだと思うと、作る気力も低下してしまうようです。
でも、理想を言えば、料理は自分のためにしっかり自分で行うべきです。
いつも外食やデリバリー、テイクアウトに頼ってしまうのは、栄養面から見ても、認知症予防の観点からも、とてもおすすめできません。
では、料理がつい面倒になりがちな方のために、栄養不足を予防するポイントを3つ挙げておきましょう。
まず、缶詰は60歳以上の方が特に不足しがちなたんぱく質をしっかりとるための、もっとも手軽な方法のひとつです。
たとえば、さば缶、さけ缶、ツナ缶、コーン、豆類、コーンビーフ、ポークランチョンミートなどは、たんぱく質補給にもってこいです。缶詰はかなり日持ちするので、まとめて購入しておくと便利です。
缶詰ほど日持ちしませんが、近年人気のサラダチキンも、たんぱく質の補給にぴったりの食材です。ブロッコリーやきのこ類などと一緒に炒めたり、白ワインを加えて蒸し煮にアレンジすれば、それだけで立派な一品ができあがります。
■惣菜やレトルトはアレンジして量を半分に
また、最近は、牛乳や豆腐などでも長期保存できるものが販売されているので、こちらを活用することで、毎日買い物にいく手間も省けます。
そして、休日に2~3品のおかずを作り置きして冷蔵・冷凍しておけば、毎日、それなりに豊かな食卓にできるはずです。
もちろん、たまには惣菜やレトルト食品なども利用してください。そうした食品の多くは味が濃いめで塩分が多いので、アレンジして薄味に仕上げることが重要です。
たとえば、ポテトサラダは牛乳でのばしたり、ゆでたブロッコリーを加えて量を増やすなどしてから、半分に分けてください。量が半分になれば、当然からだに入る塩分も半分になります。
市販のミートソースやシチュー、カレー、スープなども、牛乳やヨーグルト、水を少々加えて薄味にアレンジしてみましょう。
きんぴらなどの煮物は、生野菜と混ぜることで、あっさりおいしくいただけます。
ほかにも、豆腐やスキムミルクを活用するなど、アイデア次第で薄味にする方法はいろいろあると思います。
自分で料理を作ると気持ちも前向きになり、脳の活性化にもつながります。ぜひ、トライしてみてください。
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管理栄養士
日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻)修士課程修了。2005年より、東京・千代田区のクリニックにて、入院・外来患者の血液検査値の改善にともなう栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導などに従事している。また、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを行う。抗加齢指導士の立場からは、“食事からのアンチエイジング”を提唱している。『おやつを食べてやせ体質に! 間食ダイエット』(文藝春秋)、『1週間「買い物リスト」ダイエット』(青春出版社)など著書多数。
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(出典 news.nicovideo.jp)
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