(出典 halmek.co.jp)

中高年が健康でいるためには、どんなことに気をつければいいのか。医師の和田秀樹さんは「さまざまな調査結果を見ると、少し太っているほうが長生きしている。健康のためには体重を減らすよりも、ストレスを溜めないほうが大事だ」という――。(第2回)

※本稿は、和田秀樹『ゆるく生きれば楽になる』(河出新書)の一部を再編集したものです。

■60歳を過ぎたら「糖質制限ダイエット」はやめたほうがいい

年をとると、栄養が過多であることより、足りない害のほうが大きくなります。そのため、60歳を過ぎたら無理なダイエットは禁物です。若いうちなら多少栄養素が偏ってもなんとかなりますが、年をとると体に悪影響を及ぼすリスクのほうが高くなってしまいます。

たとえば、「糖質制限ダイエット」を試している人がいるかもしれませんが、糖質は脳のエネルギー源なので、高齢者の場合、脳にダメージを与えることになりかねません。

ブドウ糖が足りなければ頭がぼんやりしてきますし、塩分を懸命に控えている人は、低ナトリウム血症から痙攣や意識障害を引き起こすリスクもあります。意識障害はとても危険な症状で、運転していれば突然暴走してしまうかもしれないという不安もあります。

微量元素の不足も、年をとればとるほど、害がはっきりと出やすくなります。亜鉛が不足すると味覚障害を起こすことがあります。

若い頃は、多少不足したとしても味がしなくなるまではいかないものですが、年齢が上がるとかなり影響が出るようになってしまいます。亜鉛不足で味がしなくなったという人は、結構多いものなのです。

■食品添加物よりも目の前の健康

このような栄養をまんべんなく摂取するために、できれば自分の体調に合ったものを自分で作るのが理想です。けれども、疲れたときややる気が出ないとき、なんとなく食べるのも億劫だからと作る気がしなくなって食事を抜くのは好ましくありません。

たまにはコンビニのご飯を食べるのもいいではありませんか。その中でも、できるだけいろいろなおかずがあるものを選ぶようにするなど、無理のない範囲で選択しましょう。

コンビニ弁当などに入っている食品添加物の害を気にする人もいますが、それはあったとしても10年後や20年後、30年後に影響するかもしれないくらいのものです。

もう、我々の年代になったら、気にすることなどないでしょう。

それよりも、目の前の健康のほうがはるかに大事な年齢なのです。

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Manuel-F-O

■「炭水化物抜き」、「脂質抜き」はNG

「あれを食べなくちゃいけない」「これを食べてはいけない」などと難しく考えず、好きなものを好きなように食べればいい、がゆるく考える健康の基本です。

けれども、もちろんなるべくいろいろな種類のものを食べるほうがいいですし、年をとればとるほど、タンパク質を摂ったほうがいいのは間違いありません。

タンパク質が不足すると、肌も汚くなるし、髪の毛も抜けやすくなり、内臓の状態も悪くなります。

年齢とともにあっさりしたものが欲しくなる人もいますが、食べる全体量が減るからこそ内容は大切です。もはや、「炭水化物抜き」や「脂質抜き」など特定の栄養素を減らすダイエットは厳禁です。

60歳からは、できればなんでも食べる雑食でいたほうが元気です。できるだけ肉などのタンパク質を摂る、コレステロールはむしろ高めのほうがいいというのが年をとってからの基本です。

年齢とともに食べられなくなってきて、どうしても痩せてしまうという人もいますが、頑張って食べるしかありません。

食べないでいると元気がどんどん衰えてしまうので、食べる量が少ない人ほどタンパク質を重点的に摂るようにすべきです。

食べることは、本当に元気の基本だと実感します。

90代の人などを見ていると、ご家族が「最近食べなくなった」とか「痩せてきた」というときは、たいてい数カ月くらいで寿命を迎えることが多いのです。とはいえその人たちは、それまでしっかり食べてきたからこその長寿です。食べることは、健康の大きなバロメーターと言えます。

■健康と寿命のためになるのは医学よりも栄養学

医学より栄養学のほうがはるかに健康に寄与するというのが私の持論です。日本人が体格がよくなったのも、寿命が延びたのも、すべて十分なタンパク質を摂るようになったからです。

かつて日本人の死因の第1位を長らく占め、不治の病としてあれほど恐れられた結核でさえもはやかかる人がほぼいなくなったのも、タンパク質を摂るようになって免疫力が上がったからだと私は考えています。

1951年、結核に代わって死因のトップに躍り出たのが「脳血管疾患」です。昭和30年代から40年代頃は、最高血圧が150、160の人が脳出血で倒れることが多かったのです。

けれども、今では出血型の脳卒中は大幅に減って、代わりに脳梗塞脳出血のおよそ2倍になりました。脳出血になる人も血圧が高いせいである以上に、タンパク質不足で血管が破れやすいという理由です。

さらに日本人がタンパク質を積極的に摂るようになって、脳血管疾患がだんだん減少、1981年に代わりに死因のトップに躍り出たのが悪性新生物、つまりガンです。

脳血管疾患はどんどん勢いをなくし、今では死因の4位にまで落ち込んでしまいました。

日本人の死因が移り変わってきたのは、栄養状態がよくなったことが最大の原因です。つまり、栄養学のほうが医学よりはるかに長寿の源になっているのです。

100歳を超えてお元気な高齢者は、本当にいろいろなものをよく食べています。できるだけ食欲旺盛でいましょう。

■健康診断の「肥満」を信じてはいけない

健康診断では身長と体重を計測し、BMIという体格指数を算出し、生活習慣病の指針にしています。日本では、最も病気にかかりにくく健康であるとされるBMI22を適正体重とし、BMI25以上を「肥満」と分類しています。

BMI22に相当する適正体重は身長が160cmで約56.3kg、170cmで約63.6kgです。また、WHO(世界保健機関)では国際的基準として、BMI25以上を過体重、30以上を肥満としています。

ただし、世界のデータを見ると、BMIが25以上の人のほうが長生きする傾向が見えてくるのです。

日本では、40歳時点の平均余命が最も長いのは男女ともBMIが25以上30未満という5万人規模の調査結果があります。また、アメリカでもBMI25以上30未満が最も死亡率が低いという報告があります。

BMI30というと、身長160cmで76.8kg、170cmで86.7kg、日本だとかなりの肥満とされる体型です。そう考えると、アメリカはともかく、日本人で体重を減らす必要のある人はそう多くないでしょう。

太りすぎの心配をしている人のうち98%くらいは、実際には全く不安に思う必要のない、ただそう思い込まされている人ということになります。あまり体型を気にすることなく、しっかり食べることを優先したほうがいいのです。

健康でいるためには免疫力を高めることが大切で、そのために有効なのは、しっかり栄養を摂ること、歩く程度の運動、楽しむこと、そしてよく笑うことなどです。そして、もっとも気をつけるべきなのが、ストレスをためないことです。

■医者が最大のストレスになってはいけない

体重を減らさなくてはいけない、食事制限をしなくてはいけないと毎日気を遣うのは、知らず知らずのうちにストレスをためることになりかねません。

バリバリ仕事をしているうちは、職場の人間関係が最大のストレスという人が多いものですが、仕事から解放されたあとは、医者が最大のストレスになるかもしれないと思うほどです。

正常値信仰の医者にかかると、毎日の食事に気を配らなくてはいけないし、毎日時間を決めて薬を飲まなくてはいけない、真面目に通院しなくてはいけないなど、毎日の生活で制限が多くなる上に、次は何を言われるかと医者に行くこと自体がストレスを増やすことになります。

真面目に医者の言うことを守って、心筋梗塞や脳卒中の確率を何%か下げることはできるかもしれませんが、その代わりガンやうつになる確率を何倍にも上げるのではなかろうかとさえ思うのです。


※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Manuel-F-O



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和田 秀樹(わだ・ひでき
精神科医
1960年大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(出典 news.nicovideo.jp)





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